第287回研究講演会開催報告


講演会「地域の展開を情報ネットワークの動向から考える」
主催:山形県情報推進協議会,山形大学地域共同研究センター,山形ライフサポートテクノロジー研究開発機構
共催:情報処理学会東北支部,電子情報通信学会東北支部
日時:6月22日(金) 14:00〜16:30
場所:山形駅西 霞城セントラル 3F 保健センター大会議室

演題1:「中国学術ネットワークの構成及び今後ーバックボーンからキャンパスエンドまで 」
講演者:郭 宗桂(Guo Zong-gui)上海交通大学教授(通訳 日本シスコ 郭 宇 博士)
講演要旨:
中国におけるネットワークの建設過程が,全国教育研究ネット ワークと,上海地区ネットワーク,上海交通大学(SJTU)内ネットワーク の具体的な説明とともに紹介された.中国におけるインターネット構築は 3つのフェーズに分けられる. (1987-1993) の研究と試行の時期, (1994-1996) 導入期,(1997 till now) 急成長期である. 5つの商用ネット ワークと 4つの 公共ネットワーク,計9つの全国的なネットワークが建設され た. その一つ,国と地域のバックボーンとしてのCERNET (China Education & Research Network)は,すべての大学,専門学校,小中学を結ぶことを目的と している.国のセンターを中心に 10の地方センターがあり,2000年に一応の 終結をみた.SHERNETは上海地区の教育,研究機関に接続するメトロポリタン ネットワークで,ネットワークセンター (NOC & NIC) は SJTU に設置されて いる.SJTUNETは1994年に創設され,ATMが1995年メインキャンパスに導入され Dec.1998年−Dec.2000年ですべてのキャンパスに,アップグレードされた. ここでは,Web,Email,DNS,FTP,BBS,Proxyなどの一般的なものと,VOD,ビデオ 会議,電子図書館, 教育管理情報システム, 全国規模のオンライン入学・選抜 システムなどをサポートしている. CERnet を含む中国のインターネットは迅速に進歩しつつある.近い将来, SDH+DWDM (2.5Gbps)の高速ネットワークになる予定である.29の地方官公庁, すべての教育機関が接続する.また,次世代インターネットにおける教育と ネットワークセキュリティを増強し,VOD,ビデオカンファレンス,遠隔教育 など,バラエティにとんだアプリケーションの発展と大衆化が進められようと している.

演題2:「第3世代移動体通信の動向」
講演者:川上 桂 山形大学客員教授,日本エリクソン通信技術研究開発センター長
講演要旨:
携帯電話の通信メカニズムと,Bluetooth のメカニズムと応用, さらには,これからの通信産業のありかたについて述べられた. 携帯電話第二世代の通信方式,PDC(日本),GSM(ヨーロッパ・アジア) D-AMPS (アメリカ)の周波数変調,時分割,コード分割による方式が分かりやすく説明 され,第三世代方式の展開の必然性について述べられた.IMT-2000は第3世代 国際標準の総称であり,W-CDMA は日本・ヨーロッパ,CDMA-2000 はアメリカで 採用されている.2GHz band を使って,国際ローミング,高速なデータ転送 (音楽・ビデオ配信,ビデオ会議),音質の向上などが可能になっている. また,近接移動通信としてのBluetoothの通信メカニズムとその応用が説明され, HandsetやBlip が紹介された.アンケート調査,ダイレクトメール,ビラ配りな どにも応用出来るという.なお,Bluetooth と 802.11 は,どちらも 2.4GHz帯 (ISM band) を使うが,周波数が重なることはまずないであろう. これからの通信産業は,IMT-2000 への移行とともに,新たな産業の展開が加速 されるであろう.計算機業界の構造は,従来,セールス・配布,アプリケーショ ン,OS,コンピュータ,チップなど,それぞれが同じ一つの企業によって設計・ 生産されて来たが,近年その構造は破壊した.通信業界も同じ道をたどることが 予想され,新たなビジネスチャンスが生まれてくるであろう.

参加者:53名
報告者:横山晶一
山形大学工学部情報科学科