第291回研究講演会開催報告


講師: 斉藤 徳美 (岩手大学工学部建設環境工学科教授)
演題: 「岩手山の監視システムと防災」
開催日時: 平成13年12月1日(土) 15:30-16:30
開催場所: 岩手大学工学部一祐会館
(〒020-8551 盛岡市上田4−3−5)

講演要旨: 岩手山は1998年から1999年にかけて活動が活発化した.現在は小康状態である が, 盛岡市街地に近いため爆発した場合に予想される被害は甚大であり, 山の活動と防災についての研究を引き続き精力的に行っている.  山の監視のためのデータは,地震計による地震波,火山性微動,低周波地震の測定, 監視カメラによる噴気の強さや周囲状況の観測,GPSによる地面の動きの測定, 地中に埋め込んだセンサによる歪み,温度の測定などにより得られ, 岩手山山中の数多くの場所に置かれた観測点からの観測データが電波により 気象庁に,そして大学の研究機関に届けられる. しかし,冬季の観測は氷雪や風による機器の破損により断たれることも多く, 常時の観測は困難である.このため,光ファイバーを一帯に敷設し,大量のデータを 安定的に送信する計画が進行中であるが,頂上と山麓を結ぶラインがまだ未完成であり, 早期の完了が期待されている.  地下の構造を能動的に探る試みとしては,人工的な地震波(ダイナマイトの爆破)による 地下の伝搬速度分布の推定の実験が行われた.これにより,山体の東側地下深くから マグマが昇り,山体直下で地面に沿って西へと折れ曲がって移動している様子が 明らかとなった.これは,現在観察される山体表面の噴気や温度分布の様子とも一致する .  今回の火山活動は,既に1998年9月3日の比較的大きな地震(M6.1)によって 終結したことが今となってはほぼ明らかになっている. しかし,有珠山のように短い周期の活動の山と違い,噴火に直接結びつく観測データの蓄 積がないため活動開始の予知や終結の判断は難しく,絶え間ない観測と噴火に対する防災の準 備が必要である.

参加者 約70名
報告者
岩手大学工学部情報システム工学科
永田 仁史
TEL: 019-629-2843
FAX: 019-629-2843
Email: nagata@cis.iwate-u.ac.jp