第302回研究講演会開催報告


情報処理学会東北支部第302回学術講演会報告
日時:平成15年10月7日(火)13:00〜14:00
場所:八戸工業大学AVホール

演題:「CGで構築する伝統工芸空間」
講師:柴田 義孝 先生
 (岩手県立大学 ソフトウェア情報工学科教授・メディアセンター長)
主催:情報処理学会東北支部、八戸工業大学システム情報工学科
後援:(財)青森県工業技術教育振興会

講演要旨:

講演では、広帯域ネットワーク回線(JGN)(数十Mbps(メガバイト/秒転送))で地方大学・伝統工芸研究センタ間(岩手県立大学、田鶴浜町、埼玉工業大学)を結び、地方の伝統工芸物に関する設計技術や利用状況に関する情報を3DCGで作成された画像情報オンラインデータベース(数百GB(ギガバイト))で管理、実時間で検索参照する研究システムの概要の説明ならびに実演があった。実演では、3DCGにより仮想的に作られた空間である伝統工芸構築物「書院」の中に入り込み、襖の開け閉めをして、各部屋に入り込み、部屋の壁の色や、襖絵の柄を変更する等の画像情報検索処理の事例紹介があった。このVRML(Virtual Reality Modeling Language)を応用して復元された伝統工芸仮想空間の美しさに、聴講者は大変魅せられていた。伝統工芸物を表現するためには、伝統工芸品に接する人間(工芸品の設計者、購買者、購入者や実際の製作にあたる専門職人等)が持つ、「重厚な」、「豪華な」、「落ち着いた」、「個性的な」、「モダンな」、「暖かい」等で表現される「感性」と、「粗密度(紙、木材等の素材の持つ粗さ)」、「形(パタン)」、「大きさ」、「規則性」等、工芸物を「視覚から見た特徴」との間の関連に関する知識をデータベースに登録しておく必要があるとのことで、そのような「感性」分析に関する研究報告があった。「感性」分析では、工芸物の視覚的特徴の主成分を抽出するのに、因子分析手法等の統計的手法を駆使しているとのことであった。研究システムは、「地方の伝統工芸を保護すること」への問いかけにもなっていた。今後、漆器、家具、織物等伝統工芸空間の拡張、個人差を吸収した設計モデルの確立等ビジネスモデル展開への拡張等が予定されているとのことである。

報告者:高橋 良英
八戸工業大学システム情報工学科
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