第309回研究講演会開催案内


日時:2004年7月2日(金)16:00〜17:00
場所:電気系棟 451,453号室
講師:塚田稔(玉川大学)
演題:学習と記憶の計算モデル

概要:
 脳の記憶方式は、現在のコンピュータで、用いられているアドレス方式とは 全く異なる方式と考えられる。学習や経験によって新しい神経回路網を作り、 脳内に新しい情報表現を創り出す機能である。それは、神経回路のダイナミッ クスをアルゴリズムとして神経回路のニューロン間の結合の重み(シナプス荷 重)の空間に外界の時空間情報を写し取ることによって、内部表現が獲得され るというものである。ヘブ(1949)は「送り手の細胞(入力細胞)がスパ イクを送ったとき、シナプスを介してそれを受け取った細胞(出力細胞)が発 火すればそのシナプス結合は強化される」という仮説を提案し、脳で実際用い られていることが検証されつつある。海馬では外界の時空間の出来事を文脈と して一時的に記憶するため時空間学習則が有効に働いている。この学習則は入 力細胞間の同期的発火とその時間的荷重特質に基づいて結合強度を変化させる 多細胞間の学習則である。
モデルによる合成的手法によって、この学習則が高い文脈分離機能を持つこと を示す。またこの学習則を支持する海馬での生理実験データを紹介する。