第9回野口研究奨励賞

受賞者 林 優一 (はやし ゆういち)東北大学 大学院情報科学研究科

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[研究の概要]

スマートカード、スマートホン、タブレットPCなどの携帯端末通信の暗号化に必須となる「暗号モジュール」からの電磁波を通じた秘密情報の漏えいは、情報システムのセキュリティ低下を引き起こす脅威として問題になっています。こうした脅威によるセキュリティ低下を抑止するため、本研究ではコンピュータセキュリティ及び環境電磁工学の知見を融合させ、情報漏えいのメカニズム解明に取り組んできました。

電磁波を通じた情報漏えいのメカニズムを把握するためは、漏えい電磁波の伝搬を観測することが有用となりますが、従来セキュリティ分野で提案されている解析手法を用いて暗号モジュール外部における漏えい電磁波の伝搬を観測する際、ノートPC程度の比較的サイズの小さいデバイスを対象とした場合でも、2000時間程度の観測時間が必要となります。これに対し、今回受賞の対象となった論文では秘密情報が含まれる周波数帯はクロック周波数周辺とその高調波に含まれることに着目し、複雑な解析を用いることなく、特定の周波数における電磁界強度を観測することで、同様のデバイスに対し、30分以下で漏えい情報の伝搬を観測する手法を確立しました。また、本手法を用いて漏えい情報の伝搬路を可視化することで、対策が必要となる機器上の位置を明確にし、それらの部位に回路素子を適切に配置することで、これまで情報セキュリティ分野で提案されてきた、アルゴリズムレベルや論理ゲートレベルの対策に加え、EMC対策手法が電磁情報漏えいの抑制にも有効であることを実証しました。

[受賞の感想]

この度、野口研究奨励賞という大変名誉ある賞を頂き、情報処理学会東北支部の関係各位の皆様に深く感謝申し上げます。また、本研究を遂行するにあたり、曽根秀昭先生には、学生時代よりご指導を頂きました。同じく青木孝文先生にご支援を頂きました。受賞論文の核となった漏えい周波数を特定する手法に関しては、本間尚文先生、水木敬明先生にご教授頂きました。諸先生に厚く御礼申し上げます。